2011年1月30日日曜日

物語作法8カ条

『バゴンボの嗅ぎタバコ入れ』(カート・ヴォネガット)読みました。

村上春樹さんとかすごい人たちに
影響を与えているっていわれるヴォネガット作品なんですが、
この短編集は、ぼくにはそれほど響きませんでした。

やっぱり、ぼくはすごい人たちの仲間ではないってことですね。

でも、この本の冒頭にあった「はじめに」みたいな文章の中に、
とっても勉強になることが書かれていました。
それ、そのまま引用して、
今回はお茶を濁しちゃいます。


物語をつくるときの心得みたいな8カ条です。

1. 赤の他人に時間を使わせた上で、
 その時間は無駄ではなかったと思わせること。

2. 男女いずれの読者も応援できるキャラクターを、
 すくなくとも一人は登場させること。

3. たとえコップ一杯の水でもいいから、
 どのキャラクターにも何かを欲しがらせること。

4. どのセンテンスにも2つの役目のどちらかをさせること
 ——登場人物を説明するか、アクションを前に進めるか。

5. なるべく結末近くから話をはじめること。

6. サディストになること。
 どれほど自作の主人公が善良な好人物であっても、
 その身の上におそろしい出来事をふりかからせる
 ——自分が何からできているかを読者に悟らせるために。

7. ただ一人の読者を喜ばせるように書くこと。
 つまり、窓を開け放って世界を愛したりすれば、
 あなたの物語は肺炎を罹ってしまう。

8. なるべく早く、なるべく多くの情報を読者に与えること。
 サスペンスなどくそくらえ。
 何が起きているか、なぜ、どこで起きているかについて、
 読者が完全な理解を持つ必要がある。
 たとえばゴキブリに最後の何ページかをかじられてしまっても、
 自分でその物語を締めくくれるように。


バゴンボの嗅ぎタバコ入れ (ハヤカワ文庫SF)バゴンボの嗅ぎタバコ入れ (ハヤカワ文庫SF)
カート ヴォネガット Kurt Vonnegut

早川書房 2007-09
売り上げランキング : 401151

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2011年1月29日土曜日

打算もあって下巻まで

『文明崩壊(下)』(ジャレド・ダイアモンド)読みました。

そういえば、
去年も年の初めに上下巻物のぶ厚い本を読んだのでした。

でもそのときは、
へーへーいいながら上巻を読み終えたのは良かったのですが、
もう体力限界って思ってしまい、
すぐに下巻には移らず、
気楽に読める楽しい小説に手を出してしまいました。

そうなると、もう下巻には触れる気にならず、
結局もういいやと、上下巻を揃えてブックオフ送りに。
そんな苦い経験があるにもかかわらず、今年も年初に分厚い上下巻物。

学習能力の足りないぼくです。

でも、今回は読みました。
目を通さずにブックオフ送りにするのは、
貧乏性のぼくには耐えられなかった。
それと、あわよくば、
この本に書かれているネタで仕事の原稿をつくろうかな
という打算的な考えもあったからです。

で、勉強になりました。

日本は世界の中でも有数の森林面積の比率が
高い国なんだそうで、それを教えてくれた。
それだけだったら自分の無知さを
知らしめてくれたってくらいでしょうが、
森林たくさんの理由まで、この本は教えてくれました。

(実はその理由が仕事の原稿のネタにしようと思ったトコ。
上巻だけ読めばネタは入手できると思ったんですが、
書かれているのは下巻だったので、
最後まで読まなきゃいけなかったんです)

日本が森林いっぱいの理由。
それは、徳川幕府が森林保護の政策をとったからでした。

そのころから「自然破壊はいかんのよ」と考える人たちがいて、
なんとか守りましょうと
葵の紋を振りかざしながら「控えおろォー」とかいって、
木を切り倒す人を止めたり、
苗木を植えたりして森を保護したんだな、きっと。
で、今はどうなの、みんなエコしてる?
……そんな流れの仕事の原稿をつくろうかな。


文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)
ジャレド・ダイアモンド 楡井 浩一

草思社 2005-12-21
売り上げランキング : 17638

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2011年1月17日月曜日

ぼくの自己紹介

『文明崩壊(上)』(ジャレド・ダイアモンド)読みました。

今は、病気になると病院に行って医者に診てもらい、
症状についていろんなうんちくをもらって、
薬をもらいますよね。
それでちょっと安心して、病気が良くなっていく。

でも、そんなお医者さんのいない時代には、
村の呪術師みたいな人のところに行くか、
家に来てもらって、加持祈祷してもらって、
ちょっと安心して、病気が良くなっていく。

これって、どこの誰に診てもらうかの違いだけであって、
結局、同じじゃないのかな、なんて昔から思ってました。

今の人が現代の医療を信じているのと同じように
昔の人も昔からの加持祈祷術を信じていたんでしょうからね。


で、この『文明崩壊(上)』。

マヤとかイースター島とか
今では無くなってしまった文明のことをたくさん紹介しています。

人間による環境破壊が、
文明崩壊の大きな原因なっていることをテーマにしてるようです。
今はやりのエコ分野の問題提起ですね。

この本を読んだのは、
仕事で環境問題の媒体をつくっている関係上、
勉強しておいたほうがいいかなって思ったから。

でも、この本を読んで、気づかされた点は、
さっきいった、人が信じているモノのモロさというか、
やぼったさというか、嘘っぱちさというか……でした。

どの時代も、人間はやっぱり、本当に本当のことなんて、
見つけられないんだなって。

そう、この「人間はずっと昔から今の今まで、
本当のことなど何も見つちゃいない」ってことは、
この本のテーマでもなんでもありません。

作者がいいたいこととはてんで関係ないところに興味を
引かれちゃうって妙なくせがある。
そんなぼくの自己紹介でした。

文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (上)文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (上)
ジャレド・ダイアモンド 楡井 浩一

草思社 2005-12-21
売り上げランキング : 5322

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2011年1月13日木曜日

ただ1人に向けて書く

『書いて生きていく プロ文章論』(上阪徹)読みました。

ぼくの仕事の大半は、
新聞や雑誌、書籍などに文章を書くことです。

でも、毎回毎回、自信満々で文面がつくれるわけではなく、
実は
「ホントにこれで伝わる?」
「文法的に間違ってない?」などの
自問自答の繰り返しで、
なんとか文字を埋めているって感じなんです。

なので「文章作法入門」みたい本を、
よくカンニング用に利用します。

でも、そんな本を読んだあとって、
なんだか文章がぎくしゃくしちゃって、
作文がうまく進まなくなる。

一生懸命トレーニングして本番に臨もうとしたら、
筋肉痛でうまく力が出せないって感じです。

この筋肉痛を乗り越えると、
「あれ? なんか実力がついた」って気もするんですけどね。

で、この『プロ文章論』。

どうやら筋肉痛は起こさない種類のカンニング本だったみたいです。
なぜなら、文章作成の技法を述べているんじゃなく、
文章を書く前の心構えみたいなことで内容を構成しているから。

そしてその心構えの多くは、
ぼくがふだんやっていることと(幸いなことに)共通していました。
だからこの本を読んで
「やっぱぼくのやり方も間違ってはいないな」と確認できたんです。
よかった、よかった。

さらに、
この本は今までのぼくが
持っていなかった新しい考え方も教えてくれました。

新聞や雑誌の記事でも、
ただ1人の読者に向けて書くようにすると良いってこと。

直接この言葉が記されているわけじゃないんですが、
ぼくが勝手に読みとっちゃいました。

さて、これから書かなくちゃいけないあの記事は
誰に向けて書こうかな。


書いて生きていく プロ文章論書いて生きていく プロ文章論
上阪 徹

ミシマ社 2010-11-26
売り上げランキング : 2446

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2011年1月9日日曜日

「優しさ→涙」の法則

『これからの「正義」の話をしよう』(マイケル・サンデル)読みました。


「優しくしないでよ 涙がでるから」
……『ひとりぼっちで踊らせて』(中島みゆき)の曲の一節です。

優しくされると涙が出るって本当です。

とくに悲しいことや、
つらいことを現在進行形でど真ん中で体験している人には、
ほぼ間違いなくこの「優しさ→涙」の法則が働きます。

先日、ぼくの親父がガンで亡くなりました。
72歳でした。最後の1カ月ほどは、声もうまく出せなくなって、
ガラガラのしゃがれ声を絞り出しながら、
自分の意思を何とか伝えていました。

それを看病していたのがお袋。

少し疲れはみせていたものの、
まったく気丈に振る舞っていて、
ぼくは、お袋ってやっぱスゲーって思っていました。

でも、その気丈な人にも「優しさ→涙」の法則は
情け容赦なく適用されちゃうんです。

ぼくとかみさんが親父とお袋を車に乗せ、
病院への送り迎えをしたときのことです。
病院のスタッフの人たちによる
優しさ攻撃が一斉に開始されたんです。

車いすでもつらそうにしている親父には、
待ち時間の間、空いた診察室のベッドを使わせてくれたり、

お袋には常に、
「元気出してね」
「大丈夫だからね」
「何もしないで側にいるだけで、看病になっているんだからね」などと
次々声をかけて慰めたり励ましたり。

ついに、お袋の気丈バリアーは、
間髪をおかない優しさ攻撃に屈してしまい、
どどーっと涙をこぼします。
そうなるぼくも、もらい涙。
病院の一角は、とんでもない状態になってしまいます。

ちょっと病院の人、ひょっとして泣かせるためにやってんの? 

なんて思えちゃいそうですが、
やっぱ人間って、基本は優しいもんなんでしょうね。
つらそうな人や悲しそうな人に対してはとくに。

悲しさやつらさは、我慢して心の中に閉じ込めておいてはいけない、
泣くなり叫ぶなりして外に出さないとダメって聞いたことがあるけど、
もしかして、優しさって、
そんなイヤなものを外に出すための下剤みたいたモンかもしれないですね。

あっ、しまった!

これまでのお話は
『これからの「正義」の話をしよう』
とは何の関係もありませんでした。

でも、たくさん書いちゃったんで、
書き直すのも面倒だし、このままってことにしちゃいます。

本はそれなりに面白かったです。はい。


これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学
マイケル・サンデル Michael J. Sandel 鬼澤 忍

早川書房 2010-05-22
売り上げランキング : 12

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2011年1月3日月曜日

慣れてきた。

『今朝の春』(高田郁)読みました。

新聞や雑誌の仕事がメインになっている最近のぼくは、
ほとんどテープ起こしの作業をやらならくなりました。

テープ起こしとは、録音したインタビュー現場の音声を聞きながら、
そのまま文字に書き起こしていく作業です。
1字1句もらさず文字にしていこうとしたら、
1時間のインタビューでも、丸1日かかるほどの作業になります。

でも、昔はこの作業をしないと、記事にする原稿ができなかった。
テープ起こしをした膨大な量の文字を読みながら、
必要ない部分を削っていき、残ったのもので文章を組み立てていく。
そんな工程を経ないと、記事がつくれなかったんです。

この仕事を始めてから5〜6年は、そうやって記事をつくってきました。

それがある日突然、
「テープ起こししないで原稿を書いてみよう」って思い立ち、
やってみると、なんと!
それまでよりも、読みやすく深い内容の文章になることに気づきました。

その日から、ぼくは、
一冊の本に仕上げるような分量のあるインタビュー原稿は別にして、
新聞や雑誌などに載せる短い原稿ではテープ起こしをしなくなりました。

さて、
この5〜6年の間に書き連ねた
途方もない分量のテープ起こしの文字たちは、無駄だったのでしょうか。

もちろん、無駄じゃないって思いたい。

ぼくは、そんな下積みの作業があったから、
今があるんだと思ってるんです。

つまり、慣れ。

慣れないうちは、面倒なことでも遠回りでも、
よいしょよいしょって越えていかないとダメなんですね。

特に、もの覚えが悪く、要領の良くないぼくのような人間にとって。


で、この『今朝の春』。

シリーズ4作目ってことで、
作者が物語をつくるのにこなれてきたなって、感じました。

そして、読者のぼくのほうも、この作者の文章に慣れてきた。

そこで次は、
その慣れを「飽き」にしないため、どんな工夫を凝らすか。
これは、ぼくが自分で原稿をつくるとき
毎回頭を悩ませている事柄でもあります。


今朝の春―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-4 時代小説文庫)今朝の春―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-4 時代小説文庫)
高田 郁

角川春樹事務所 2010-09
売り上げランキング : 7980

Amazonで詳しく見る
by G-Tools