2011年4月28日木曜日

頼りになる文学賞は?

『謎解きはディナーのあとで』(東川篤哉)読みました。

困ったときの山本周五郎賞。
読む本のストックがなくなって、何を読もうか迷うとき、
頼りにするのがこの文学賞です。

今まで呼んだものをネットで引いてみたら、
『ゴールデンスランバー』『夜は短し歩けよ乙女』
『覘き小平次』『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』
『ぼっけえ、きょうてえ』『奪取』『家族狩り』
『砂のクロニクル』『TUGUMI つぐみ』『異人たちとの夏』
と10作品も読んでました。

で、どれもハズレなし。
全部がその年に読んだ作品のベスト3に入るくらいよかった本です。

そしてもう一つ。今まで頼りにしていた賞があります。
本屋大賞です。
その1位になった作品でこれまで読んだのは、
『天地明察』『告白』『ゴールデンスランバー』
『夜のピクニック』『博士の愛した数式』。

このうち『告白』が少し物足りなかったけど、ほかは全部OK。
十分楽しませてもらいました。

これとは逆に、裏切られてばかりの賞もあります。
たぶん文学賞の中では最も有名な芥川賞、それに直木賞。
たまたまなのかもしれませんが、
どちらも「えーっなんでぇ?」とうなってしまうもの
ばかりでした(作品名はナイショ)。


で、この『謎解きはディナーのあとで』。

申し訳ないのですが、読むのが苦痛でした。
でも、途中で読むのをやめてしまうのは、
もっと申し訳ない気がして、
後半は斜めに目を通しながらの読了です。

で、この本を読み終えた今、
ぼくの中では、本屋大賞が芥川賞・直木賞のレベルに入りつつあります
(この一文だけ読むと、一般的にはすごいほめ言葉になるんだろうな…)。


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2011年4月27日水曜日

シリーズ第6作目も買うでしょうね…

『小夜しぐれ』(高田郁)読みました。

イスの上では、ぼくはたいがいあぐらをかいています。
なんか行儀が悪いような気がして、
意識的に足を下におろすこともあるのですが、
いつの間にか、またあぐら姿勢になってるんです。

でも、いつものランニング通勤の影響でヒザが痛かったり、
筋肉痛だったりするときは、
あぐらは痛みを助長するようです(ぼくだけかもしれませんが)。

最初は痛くないんですが、
何かに集中して同じ姿勢を続けていると、
あぐらをといたとき、うぎゃーとなります。

だから、足に違和感を感じるなってときには、
なるべくあぐらをしないように気をつけてるんです。

それでも、なぜか忘れてやっちゃう。
んで、後で痛い目をみる。


さて、高田郁さんの「みをつくし料理帖」シリーズ。
たしかこの『小夜しぐれ』は5冊目です。
1冊目を、涙を流しながら読んで、
2冊目はトーンダウンしながらも
3冊目は新刊が出ると同時に購入し
「あれっ、やっぱちょっと違うかも」と感じて、
それでもここまで続けて読んだんだからと、
少しさめながら4冊目を読んだら、
「やっぱもういいかな」って感じてしまったシリーズです。

だから5冊目は買わないし、読まないはずだったんです。

そんな読書プランを変更させたのは娘からのメールでした。
「高田郁さんの新刊出ているから買ってきて」

本棚に置いていたこのシリーズを、
ぼくの知らないうちに、娘も読んでいたんですね。
大筋のストーリーは各巻でつながっているから、先が気になる。
なので新刊が出たから買ってこい、と。

娘の依頼には、逆らえないのが父親です。
いや、どんな人の依頼でも逆らえないのがぼくです。

そして、当然のように先に娘が読んで、
そのあと、ぼくが読みました。
次の6冊目は要らないな……というのが正直な感想でした。

でも、きっとまた娘からメールが来ると思います。
そしてぼくは買って帰ると思います。
ちょうど、足が痛いときでも、
ついつい、あぐらをかいてしまうように。


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2011年4月24日日曜日

こそばゆいです。

『日本はなぜ世界で一番人気があるのか』(竹田恒泰)読みました。

一冊の本をつくるとき、
ぼくが一番多く担当させてもらうのは、
執筆&編集という役割です。

まず文字の原稿を自分で書いて、
それに合ったイラストとか写真とかを集めます。
それをレイアウトしてくれるデザイナーさんに渡し、
各ページに配分してもらいます。

このとき
「だいたいこんな感じで配分してね」という
手書きのラフもつくって、
他の素材と一緒にデザイナーさんに渡します。

で、ある本をつくっていたときのことです。

ラフと一緒に素材一式を渡しながら説明するぼくに、
担当のデザイナーさんが言いました。

「ここまでやる人は、いませんよ!
全ページのラフなんかもらったの初めてですよ! すごいッスね。
これもし、そのまま印刷したら、メイキング本になって、
こっちのほうが売れるかもしれないッスよ!」

ぼくは、デザイナーさんに要らぬ手間を掛けさせてはいけないと、
300ページ近くある本の全部ページをラフで起こしていました。
そこに、イラストや写真などの合い判はもちろん、
注意して欲しいことなんかを細かく書いていたんです。

でも、それはいつものことです。

そんなに褒められることとは思ってないんです。
後のことを心配しながら
「ここに注意書きしておかないと誤解されるかも」
「間違っちゃうとダメだから、確認マーク入れておこ」
とか考えているうちに、
全ページ書いちゃって、指示も細かく入れちゃう。

つまりは、後でミスが発覚するのが怖い、
臆病者ってだけなんです。

それを、このデザイナーさんのように褒められると
(もしかしたら、バカにしてたのかもしれませんが)、
とってもこそばゆくて、とっても居心地が悪くなります。

で、この『日本はなぜ世界で一番人気があるのか』。

ぼくがデザイナーさんのお褒めの言葉を頂いたときの
「こそばゆさ」そのものでした。

「日本人としての誇り」って、
ぼくにはそれほど必要ないかな……。
むずむずして、居心地が悪くなる気がするので。


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2011年4月19日火曜日

ぐにょぐにょ部分が影響するつくり方

『大いなる遺産』(下)ディケンズ、読みました。

もう20年ほど前になるでしょうか。
ぼくの好きな作家ジョン・アーヴィングさんの
『ホテル・ニューハンプシャー』を読んだときのこと。

感想からいうと、とっても面白かったんです。

休みの日の朝に読み始めて、
その日の夕方までに一気に読みです。
読後はもう興奮冷めやらず、
いてもたってもいられない感じに。

そんなとき目に止まったのが、
新聞の映画上映スケジュールの欄でした。

そこに、この作品を原作にした映画が載ってたんです。

上映時間を確認すると、
「うわっ、これから出掛ければ、最終上映に間に合うじゃん!」

そんなわけで、ぼくは急いで上映館に向かいました。

原作と同名タイトルの映画は、
さっき読んだ本の内容をほぼ忠実に描いていました。
ぼくが感動して、
いてもたってもいられないほどになった内容です。

でも! でも、でも。面白くなかったんです。

どんでん返しなんかがあって、ネタバレしちゃったから、
つまらないってことじゃありません。

最初からストーリーがわかっていたって、
面白いものは面白いでしょ。

何度も繰り返して読む本や観る映画はあるし、
そういう作品は、たいてい再度触れるたんびに
違った面白さが出てくるモンじゃないですか。

でも、この映画は、面白く感じられなかった。

このときぼくは、同じ内容でも、つくり方の違いで、
面白さはまったく変わってくるんだなってことを実感しました。

これは映画と小説という伝達方法の違いというより、
つくった人のクセとか技術とか思いとか、
そんな形にならないぐにょぐにょした部分が影響してるんだと、
何の根拠もなく考えています。

もちろん、つくり方を目一杯ぼくの好みに合うようにしても、
びた一文も面白くならないストーリーってのは、ありますけどね。

えーっと、わかってると思いますが、
ここまでは『ホテル・ニューハンプシャー』の話です。

で、今回感想を書こうと思ったのは、
やっとのことで上下巻を読み終わった『大いなる遺産』。

そうですね……『大いなる遺産』
ぼくの好みに合うようなつくり方をしてくれれば、
きっと面白かったんだろうな……。

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2011年4月15日金曜日

過渡期です。

『警視庁草紙(上)』(山田風太郎)読みました。

会社が今の場所に移る前、
ぼくの自宅から会社までは約10キロの距離がありました。

ぼくは定期代をケチるためその道のりを自転車で通うことにしたんです。

でも、それだけでは三日坊主になる可能性があるので、
なにかしら自分を奮い立たせるものを用意したい。
そこで、毎日タイムを計り、
1分刻みで縮めていく目標を掲げたんです。

目標が決まり、そこに集中することで、
三日坊主はなんとか避けられました。

そうして会社が今の場所に移るまでの約2年間、
雨の日もカッパを着てチャリ通勤を続けたんです。

でも、そのチャリ通勤を始めた最初の半年くらいは、
毎日のように太ももが筋肉痛でした。
だらだら坂道では、ぜいぜい状態で息が切れ、
空気を吸い込むのも難儀して、
ひょっとしてこのまま倒れて、
あっちの世界にイっちゃうんじゃないかって思ったほどです。

それが半年を過ぎて、
あぁもうすぐ一年か、なんて考えるようになったころ。
筋肉痛も息切れもまったくしていない自分に気づきました。

最初のころはあんなに辛かったのに、今はなんともないじゃないか!

ここで「過渡期」って言葉が浮かんだんで、辞書で調べたら
「古いものから新しいものへと移り変わっていく途中の時期」
ってありました。

チャリ通勤を始めたころのその半年間は、
この過渡期だったんです。

チャリ通勤に慣れていない身体から、チャリ通勤用の身体に移る時期。

どんなものでも移り変わる時期ってあるんですね。

で、この『警視庁草紙』。
江戸時代が終わって明治の近代社会に移り変わる時期が舞台です。

実は……この本を読むまで、浅はかなぼくは、
明治になって近代化がなされる時代に、
この過渡期があるとは考えもしませんでした。

誰もがささっと名字をつけ、
ちょんまげが瞬間にざんぎり頭になり、
腰に差していた刀はすぐ消えちゃった、
くらいに思っていたんです。

でも、もちろん、違うんですね。
そんな簡単であるわけがない。まさに過渡期だったんです。

『警視庁草紙』──ストーリーも面白かったんですが、
そんな時代があったってことを教えてくれたありがたい本でした。

なお、ぼくの現在の会社の場所は、
自宅までの距離が約5キロ。
そんで、1カ月ほど前からランニング通勤を始めています。

今、過渡期です。


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2011年4月14日木曜日

つながらないならショートショート

『四畳半王国見聞録』(森見登美彦)読みました。

中学生のころ、ぼくは毎日のように
星新一さんのショートショートを読んでいました。
5〜6ページで一つのお話が完結してしまうというあの短さが、
人並み以下の記憶力しか持たず、
頭の回転もそれに応じて鈍いぼくには、
ジャストフィットしていたんだと思います。

ああ楽しいな。面白いな。自分でも書いてみたいな。
この短さなら、ぼくにもできるんじゃないかな……。

と、中学生なので、よく勘違いしてました。

さらに、いろんな分野に共通すると思うのですが、
おうおうにして質の高いの作品(または製品)ほど、
「これなら自分でもつくれるじゃん」って
思わせてしまうようです。

なので、ぼくも書きました。ショートショート。
そう、単純なんです。うん、大丈夫、大丈夫って感じです。

ちょうど卒業文集をつくっている時期だったので、そこに載せる文章。
それにショートショートを書いて提出しちゃったんです。

提出後、一週間ほどたった日のホームルームの時間でした。

その日の議題は、「中学最後の文化祭に何をやるか」です。

まず担任の先生が言いました。
「先生の提案は、みんなでやる劇だ。
その劇に、いい題目を見つけたので、今から朗読する。
よく聞いて、みんなで判断してくれ。
──タイトルは『ぼくはロボット』だ」

そのタイトルを聞いた瞬間、
一人の生徒の顔が真っ赤になり、下を向いたかと思えば、
いきなり顔を上げてきょろきょろと左右を見たり、
果ては教室から逃げだそうと
立ち上がりかけたりするヤツがいました。

その挙動不審になったヤツ、それがぼくです。

先生の読んだ『ぼくはロボット』を書いたのは、
ぼくだったんです。

中学生活の思い出をつづる文集に、
ふざけたお話を書いて怒られるものだとばかり思っていたぼく。

それがなんと、担任の先生が興味を示してくれて、
面白いから、みんなで劇にしようとまで言ってくれた
(でも、文化祭の出し物は、結局お化け屋敷になったんですけどね)。

ぼくの書くモノって面白いんだ!

中学生ですから、よく勘違いします。
さらにその勘違いはその後の人生に大きく影響を与えます。

ぼくは今、文章を書いたりして、
いろんな媒体をつくる仕事をしていますが、
よくよく考えると、
その出発点はこの勘違いだったんでしょう、きっと。

あっ! いかん、いかん。
ここは『四畳半王国見聞録』の感想を書くスペースでした。

えーっ、この本、7つの短編で構成されてるんですが、
それぞれがつながっているようでつながっていない。

その中途半端さが、ぼくには中途半端でした。

つながるならつながる、つながらないならつながらない。
つながるなら一冊分の長い物語に、
つながらないなら、一つのお話をもっともっと短くして
ショートショートにしちゃってほしい。

あっそうだ、このショートショートのことが頭に浮かんで、
長々と阿呆中学生の話をしちゃったのでした。

とはいえ、森見さんの作品は、つまらなくないです。面白い。

中学時代に星新一さんに夢中になったのと同じように、
おじさんになったぼくは、森見さんの作品を追っかけています。


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2011年4月1日金曜日

原始人と呼ばれています。

『大いなる遺産(上)』(ディケンズ)読みました。

ぼくは、単に鈍感なんだろうとつくづく思ったのが、
今回の東北関東大震災です。

決してキモが座っているとか、度胸があるとかではありません。
実は、東京で震度5とかの揺れでも、そんなに怖くなかったんです。
それよりは、ジェットコースターのほうが怖い。

会社の仲間やカミさんなんかはビクビクで、
その後に続く余震でも過敏に反応して、
神経をすり減らしている様子なのに……です。

最初の揺れは会社にいたときだったんですが、
それがおさまったとき、
鈍感で不謹慎なぼくは、青い顔をしている仲間に、
こんな場違いなこと言ってました。

「はじめ人間ギャートルズみたいな原始時代の人たちは、
誰も地震の揺れを怖がらなかったんだって。
そんな記事をなんかで読んだことあるよ。
だって原始時代は、
倒れてくる家具も建物もなかったから別に危険じゃない。
ちょっとしたイベントみたいに楽しんでいたんじゃないか
って書いてあった」

すると、
「お前も一緒じゃわい! 原始人か!」

「単に鈍感」というのは、
つまり現代社会に適合していない原始人だ……ってことのようです。

さて、この『大いなる遺産(上)』。
上下巻で1つのお話になっていて、その半分だけ読み終えました。

下巻に入って、その後の展開次第で面白くなるのかもしれませんが、
この上巻しか読んでないぼくは、
なんでこれが100年以上も読み継がれてるンだろうと
不思議に思っちゃいました。

つまり、地震で怖さを感じなかったように、
上巻だけの物語では、
ぼくの気持ちは敏感な反応を示さなかったんです。

ということで、下巻に期待です。

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